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7.282023
フィリピン伝統織物の研究書『INABEL』の著者を訪問
『INABEL』の著者、Mr. AL M. Valenciano氏にお会いしました
INABEL(イナベル)とは、フィリピンルソン島北部イロコス地方の伝統織物の総称です。私たちはフィリピンの伝統織物を紹介するにあたり、HABI PRIDE というブランドたちあげましたが、私たちにとって2016年に出版されたこの本は大切な教科書、バイブルのようなものです。著者のAL氏は、織り手の高齢化がすすみ衰退しつつある伝統織物の継承のために、織手のコミュニティ支援を長く続けてきました。また、Balay ni Atong (アトンの家という意味)というブランドを立ち上げ、手織物の販売にも力を入れています。今回は、マニラでAL氏にお会いすることができました。
Balay ni Atong の POP UP SHOP(期間限定ショップ)へ
AL氏の活動拠点は地方のラ・ウニオンですが、マニラで期間限定ショップ(Power Plant Mall)を開いているとのことでした。私たちがマニラへ到着した7/12(水)は最終日でしたが、夕方にお目にかかることができました。
会場のPower Plant Mallは富裕層向けのモールでしたが、伝統工芸や織物を現代に生かすというコンセプトのおしゃれなドレスやカゴバッグを扱うハイブランドがいくつか店を構えていていました。自国の伝統工芸品を身に着けることにに関心が高まり、トレンドになっていることをがうかがえます。決して安くない価格ですが、お客様の支持を得ているようでした。
ALさんのお店もとぎれることなくお客様が来店されていました。アーティストでもあり、伝統織物研究の第一人者であるALさんの商品の品ぞろえは質が高く、ベッドカバーやクッションなどを求める方が多いようです。
AL氏に『輪結びつなぎ』論文の英語版を手渡す
早速、渡辺さんの著書の英語版をお渡ししました。ALさんは『INABEL』の共同執筆者5人にも届けてほしいという私たちのリクエストも快く引き受けてくださいました。
渡辺さんが発見した幻の布つなぎの結び玉技法については、最近ワークショップイベントで出会ったミンダナオのマラウィの織物職人で、この技法に近いものができる人がいるとの新情報をいただきました。約20年前には消滅しかかっていたというこの技法を、何とか継承してほしいと思います。そのためにもその職人さんに、この本を届けられたらと思いました。
店内にはさまざまな手織物が販売されていました。そのなかから、AL氏は、布の上に糸(ノット:結び玉)を織り込むという技法をいくつかの実物とともに紹介してくれました。一見刺繍のように見えますが、職人は、織りながら針を使い糸を差し込んで柄を浮かすという特別な技法(フローティング)だそうです。裏側には一切糸は出てきません。イロコス地方やビザヤ地方の織物に見られる技法で、デザインとして生かされているとか。今も織れる人はいるそうですが、大変難しい技法だそうです。この技法について初めて知ることができ、大変勉強になりました。
そのほか店内には、布と布を美しくつないだ商品がいろいろありました。フィリピンの布と布をつなぐ技法は多彩で、美しく工夫され継承されています。
私たちは遠隔地の織り手のコミュニティの訪問は難しいため、こうして実際に布を手に取りながら、専門家から織り手さんの技法について伺う機会はとても貴重でした。本からではわからないことばかりでした。
ALさん、ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いします!