出張2日目7/13(木)の午後、HABI: The Philippine Textile Council (フィリピン伝統織物/テキスタイル評議会)のボードメンバーとのミーティングを行いました。

HABI: The Philippine Textile Councilとは…

(以下、HABI COUNCILと略表記)

伝統織物の継承と発展を目的に2009年から活動を続けている団体です。伝統技術やデザインに関する学者の研究論文を本として出版したり、所属デザイナーは伝統織物をファッションや家庭用品に取り入れて現代のライフスタイルに取り入れることを積極的に提案。織物コミュニティへの直接支援や、かつて盛んだった綿花産業を復活させるべく政府とのプロジェクトも行っています。

今回は、私たちの訪問希望に対して、オンピン会長がボードメンバーとのミーティングの場を設けてくださいました。

私たちの活動や「フィリピンの結び技法」の論文を紹介

私たちの活動についてや訪問の目的を落ち着いた場所でプレゼンテーションできたのは、ありがたいことでした。

まず、渡辺さんの論文『フィリピンの不思議な布つなぎ技法』を献本し、内容を説明。渡辺さんは、発見した民族衣装の一部分や写真から忠実に技法の再現に取り組みましたが、すぐにはその内容が理解されずに、「これは渡辺さんの独自の技術をまとめた本ですね」という反応がありました。創作ではなく伝統技法の再現であることを説明するうちに、「それは誰でもできることではなく、たとえ見ても忠実に再現までできませんよね」「そんな細かい仕事はとても無理だわ」というように感嘆の声があがりました。結び技法を記録に残したものはフィリピンにはないそうです。みなさん、渡辺さんの論文の希少価値を認めてくださいました。

パナイ島特産のピーニャ(パイナップル繊維)やアバカ麻の扱いにおいては、指だけで結び玉を作るKnottingは重要で高度な技術であることは専門家には知られていますが、今まで記録として文書化されていないので、多くの人に共有されてないとのことでした。パナイ島のアクラン大学が技法を研究しているので、この本を届けて研究に生かしてもらいましょうとのことでした。

私たちも長年パナイ島のNGOと付き合いがあり、彼らはアバカ麻の伝統のアンキット編み(結び技法)を誇りにして美しいスリッパを製作してくれましたが、手間のかかる難しい結び技法であることを思い出しました。

日比の貴重な本を交換しあう

今回私たちが届けた渡辺さんの本の返礼として、HABI COUNCILが刊行している貴重な織の専門書を私たちに献本してくださいました。さながら日比の本の交換会となりました。

いただいたのは、『HABI』『WEAVING WAYS』『Rara』『Pina FUTURES』の4冊で、一般には手に入りにくい本で、フィリピンの織物を知るには欠かせない内容です。参考資料として活用したいと思います。感謝です。

訪問後すぐ、私たちの訪問をインスタストーリーズに投稿してくださいました。フィリピンの織物関係者にも情報が流れました。インスタパワー!

失われた技法『輪結びつなぎ』ワークショップ開催の要請

HABI COUNCILでは、年に一度10月に、全国から小規模な伝統織物コミュニティや業者をマニラに呼んで、ショッピングモールの大きな会場で、’LIKHA HABI MARKET FAIR’ を盛大に開催しています。地方の小さな業者さんにとっては、マニラで多くの人に自慢の伝統織物を見てもらう大きなチャンスになっています。今年はワークショップも開催するとのことで、そこで、渡辺さんに『輪結びつなぎ』の実演をやってもらえないかとの要望をいただきました。しかし高齢の渡辺さんのご都合が最優先なので、改めてお返事するとお話しました。

また、私たちのHABI BRIDEの商品もみなさんに見ていただくことができました。フィリピンのビナクル織と日本の職人さんによる日比コラボの商品づくりです。シンプルですがデザインの良さ、材料の質の高さとすぐれた縫製技術をほめていただきました。日本ではほとんど知られていないフィリピンの伝統織物をこれからも日本で紹介していきたいと思います。

オンピン会長からは、HABI COUNCILとPAKPAK NATINは、今後も連絡を取り合い、交流を深めていきましょうという温かいメッセージをいただきました。

私たちにとって、貴重な実り多き訪問となりました。