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REPORT⑤ フィリピンの生産者を訪ねて マニラ 人形工房と布絵本工房へ

マニラの郊外カローカン市タラ村にある人形工房(スタードール多目的協同組合)と布絵本&布おもちゃの工房(スター財団)の生産者に会ってきました(2/5)。

フィリピンの経済成長率は昨年も6%を超え、めざましい経済発展を遂げています。この好景気のおかげで庶民の暮らしもも少しは改善されているのでは?とかすかに期待をしましたが、激しいインフレにより、諸物価が高騰、現地の生活状況はかなり厳しく、逼迫していました。

マニラ中心部でも郊外でもあちこちで高層ビルの建設ラッシュ。
道路渋滞も悪化している

協同組合のマネージメント・幹部スタッフのNさんによると、生活を支える米は昨年1Kg27ペソが,今や42ペソと1.5倍以上に。コーヒー、クリーマー、石鹸など生活必需品の値段も高騰しているそうです。注文はそんなに増えず、労賃も大きく上がらないので、日々の生活は厳しくなるばかりというわけです。

彼らから請求される労賃が毎回2割近く上がっていて、私たちはそれを受け入れてきましたが、デフレの日本で商品の価格をあげるわけにもいかず、節約の知恵をしぼっている状況です。

生活がたちゆかなくなった組合員からの協同組合への賃上げ要求が激しく、かなわないとわかり、組合をやめたメンバーも何人かいるとのこと。メンバーの中には生活に困窮し、栄養不足から体を壊して仕事に来れなくなっている人も。協同組合では、苦肉の策として、米を少しでも安く買うために大量購入し、1軒10Kg~15Kgを配布し、給料から差し引く緊急措置を何回か試みたそうです。しかし、組合自体の資金も尽きてそれさえ不可能になってしまった!と幹部スタッフのNさんは涙ながらに語りました。

私たちは、協同組合とのお付き合いは15年になり、彼らの組織運営もうまくいっていたのを知っています。リーマンショック危機など大きな浮き沈みを経験しましたが、これほどの非常事態は初めてです。人形作りは分業制ですすめているので、作り手が減る状況が続けば、生産もできなくなってしまいます。実は、すでに昨年から影響が出ており、人気商品「赤ずきん」の品薄状態が半年ほど続き、お得意様にはご迷惑をかけていました。彼らがこの危機を乗り越えられるか、状況を見極めてこようというのが今回の出張の目的でもありました。

ミーティングを重ねながら皆で学んで運営してきた協同組合は、よく組織化されています・・・

残った組合メンバーで話し合い、欠員の出た作業工程を互いにカバーし、かろうじて再び生産を開始したとのことです。工房は週3-4日稼働。長い経験で培われた工房の縫製技術は世界で通用する水準のものです。なんとか持ちこたえてほしいです。日本では3つの団体が販売支援をしていますが、私たちも日本で連絡を取り合って、注文数を倍増し、この危機を乗り越えてもらうべく応援しています。

人形工房の危機を乗り越えるべく奮闘中のメンバーたち

フィリピンの好景気の数字からは、想像もつかない庶民の現実に、私たちはただただ愕然とするばかり。私たちは彼らの力を信じ、応援し続けるほかありません。「赤ずきん人形が届くのを待っているからね!」と別れ際の握手に思わず力がこもりました。

経済成長のもたらす厳しい現実、貧富の格差の拡大。資本をもたない貧困層の人たちには、「富」のおすそわけは決してありません。安倍政権の「トリクルダウン」理論(富めるものが富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちるという説)がむなしく響きます。フィリピンから日本の私たちもしっかり学ばなくてはなりません。

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