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フィリピンコーヒー事情 フィリピン通信11

フィリピン通信11  2011.3.10.

フィリピンコーヒー事情    穴田久美子

経済成長とコーヒーブーム

マニラ首都圏の街角やショッピングセンターで最近目につくのが、おしゃれな内装と高級志向のコーヒー専門店である。一番安いブレンドコーヒー一杯の価格(50ペソ=約100円、スターバックスで80ペソ=約160円)でさえ、工場労働者が食堂で注文するランチセットより高い。よって中流家庭の若者たちやビジネスマン、マダム達のたまり場。しかし首都圏だけでも、500店舗がひしめいており、過去数年、年間20パーセント増という高い伸び率で増えているという。

上の写真は、フィリピン生まれのカフェチェーンBO’S Coffee。セブで操業して全国に60店舗以上を展開している。創業者のニックネームが店名になっている。

もちろん一歩中に入ると,インターネットが使い放題、自由に読める新聞や雑誌がラックに並び、ゆったりしたソファー、寒いくらいのエアコン完備、空腹を感じたらケーキやサンドイッチ、サラダなどの軽食もメニューが豊富。20年ほど前は、スターバックス、シアトルズベスト、コーヒービーンズ&ティーリーフ、UCCなど海外の資本が主流だったが、この10年の間はフィガロ、ボーズカフェ、マリー・グレース、コーヒー・ビーナリーなど、国内資本のチェーン店が台頭してきている。これらの店では、朝食セット、ランチセット、サンドイッチ、パスタ、サラダ、ケーキ、フルーツジュースなどのメニューも揃えてあり、首都圏の外食産業のトップランナーと言える

コーヒー産業の復興と人材育成

フィリピンでは世界でも珍しく、主要な商業用コーヒーであるアラビカ、リベリカ、エクセルサ、ロブスタの4種類の豆を生産している。しかし年々増えているコーヒー専門店の需要に豆の生産量は追いつけない現状。不足分はベトナムやインドネシアから輸入しているという始末。国内のコーヒー主要生産地はミンダナオ島中部、ルソン島南部、ルソン島山岳部に集中しているが、2007年と2008年の生産量はいずれも30万トンほどで、現在の需要の約70万トンの半分以下しか国内で調達できていない。しかし2008年、農務省高価格商業作物推進課は業界団体のフィリピンコーヒー評議会(PCBI)と連携してコーヒー産業復興プログラムに着手。2008年と2009年の予算から合わせて1億5,000万ペソが計上されている。その予算は乾燥作業などのポスト・ハーベストの効率向上などに生かされており、歩留まりを上げて、将来は世界のコーヒー市場にフィリピンのコーヒー豆を広げていることを目指している。

フィリピンのコーヒー豆は、約100年前までは世界4位の生産を誇っていた。スペインの修道士が約250年前にコーヒー豆をもたらし、根付かせた。しかし約100年前、コーヒーの葉を赤茶色に変色させる「サビ病」の流行で、生産が激減、ラテンアメリカ諸国にその地位を奪われた。しかし2000年初めから、ルソン島南部のカビテ州アマデオ町がスペインの修道士がエチオピア運んだリベリカ種で、「サビ病」に負けずに地元に残ってきたBarakoと呼ばれてきた伝統種をコーヒー産業再生の柱として「バラコを救えキャンペーン」を展開してきた。バラコはタガログ語で「威勢のいい」という意味で、強い風味と独特の苦みを売りにしている。

しかし消費者に直結する、コーヒーチェーン店の将来の難問は人材不足。「バリスタ」と呼ばれるコーヒー職人の確保に苦労している。PCBIは2009年4月にPhilippines Coffee and Barista Academy を創設、二週間、3か月、半年の研修コースを設けて人材育成に取り組んでいる。労働雇用省も技能教育開発庁(TESDA)国家技能検定試験にバリスタ部門を設け、「国家技能証明書」の発行を行うなど、職人の育成を支援している。しかし証明書の取得後に数カ月の労働経験だけでも、中東の専門店やクルージング会社の募集があれば、若いバリスタは流れていく。毎月50人前後のバリスタが海外出稼ぎに向かうという、海外雇用庁のデータもある。

 

ストリートチルドレンをバリスタに

 


このコーヒーブームに乗って、2011年1月中旬、もとストリート・チュルドレンが働きながらバリスタの研修を受けられる「KSEMカフェ」がオープン。KSEMとは20年以上、ストリート・チュルドレンや性的虐待を受けた少女たちの保護・教育施設を運営するNGO、「カンルーガン・サ・エルマ」の略称。6年前、イギリスの支援団体から2ヘクタールのコーヒー農園(カビテ州)の寄付を受け、進学や就労の機会に恵まれない、元ストリート・チュルドレンの青年の生活の場としてきた。しかし美味しい豆の生産に成功するにつれ、青年達は自分たちのコーヒーショップを持つ夢を抱くようになった。一年の準備期間を経て、マニラ市内の有名大学が集まる、タフト通りに、インターネットも楽しめるカフェが誕生した。

マニラへ旅行に来られるとき、是非、フィリピン産のコーヒーの味を多くの方に楽しんでいただきたい。お土産にもお勧めの一品。

筆者プロフィール
Kumiko Anada
北海道出身。マニラ在住22年。フリーで取材や通訳などを仕事にしている。海外労働者や女性、
こども、先住民族が抱える問題を支援するNGOでボランティア。

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