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フィリピンのお祭り フィリピン通信12

フィリピン通信12  2011.3.10.

フィリピンのお祭り  Ty京子

漁業のお祭りと農業のお祭り

毎月のように全国各地、どこかでフィエスタ(お祭り)のあるフィリピンですが、その多くはキリスト教にかかわりのあるお祭りです。クリスマスやイースターはもちろん全国的な行事ですが、それ以外にも、それぞれの町のサント(聖人)にちなんだ日がその町のお祭りの日になっています。とくに有名なのは1月の、パナイ島カリボ地方やセブ地方のサント・ニーニョのお祭り、5月のブラカン地方やケソン地方のサント・イシドロのお祭りです。

サント・ニーニョのお祭りは1月の第3日曜日に行われ、カリボでは「アティ・アティハン」、セブでは「シヌログ」と呼びます。「ニーニョ」とは「幼い子」という意味で、マゼランがフィリピンに持ってきたという幼いキリスト像を奉り、カラフルな衣装をでき着けて、「ビーバ!サント・ニーニョ!」と掛け声をかけながら町中を練り歩くお祭りです。この「サント・ニーニョ」像はセブ島の海岸で漁師の網にかかって発見されたことから、漁師の守り神といわれていて、漁村の多い地方では「サント・ニーニョ」を守護神としているところが多く、1月第3日曜日はあちらこちらの漁村でお祭りを見ることがます。

 

一方、5月の「サント・イシドロ」は農業の守り神です。農業の盛んな地方では、いろいろな形でお祭りをします。ルソン島ブラカンのお祭りは「カラバオフェスティバル」と呼ばれ、それぞれの村からの収穫物を積んだ牛車を、カラバオ(水牛)が引いて教会に感謝のミサに行きます。その水牛が教会の前で、前足を折って膝をついて感謝をするのが恒例になっています。水牛の体はきれいな模様に刈り込みが入れられ、角に花をつけたりしていて面白いのですが、ドドドッと何十頭もの水牛の行列はかなりの迫力です。
ミサの後には、積んでいた作物を参列していた人たちに配って、収穫を喜び合います。牛車の上から放り投げてくるのですが、トウモロコシやハヤトウリが飛んできたり、ときにはスイカが丸ごと飛んでくることもあって大騒ぎになっていました。

 

ケソン州のサリアヤとルクバンの町のお祭りは、町中を収穫物で飾り立てるお祭りで、5月の14日と15日の2日間にわたって行われます。サリアヤでは、日本の七夕のように、家々が笹竹にバナナや野菜を括りつけて門前に立てます。5月15日の3時のミサが終わると、教会から「サント・イシドロ」像を乗せた山車が町の中を回り、その山車が家の前を通り過ぎると笹竹を倒して、人々は飾りを取ることができるのです。

ルクバンの町はさらに華やかです。それぞれの家が、道路に面した壁や屋根を収穫物で飾りたてます。収穫物のほかにお祭りに欠かせないのがキーピンという、米粉でつくった木の葉形のお煎餅のようなものです。これを束ねてシャンデリヤのような形に作って、軒先や窓辺に飾ります。色とりどりのキーピンがヒラヒラと風に揺れて、ちょっと仙台の七夕飾りのような光景です。キーピンは、米の粉を溶いて色付けしてからカカオの葉に薄く流し、蒸してから半乾きのときに葉からはがし取り干したもので、半透明なパリッとしたお煎餅です。町中ではこれを炭火であぶって食べさせてくれます。
軒下の飾りは、それぞれの家の収穫物を使って飾っていますが、それぞれが工夫されていて、稲穂でおとぎの家のように作ったり、ココナツがゴロゴロぶらさがっていたり、お花いっぱいの家があったり・・・見ているだけで楽しくなるお祭りです。
5月は一年でもいちばん暑い時期が終わりに近づき、そろそろ雨季を迎える季節です。このお祭りが終わると、また新たに田植えの準備や農作業に忙しい日々が始まります。

 

5月は美しい花祭りのシーズン

また、5月の1カ月を通じてサンタ・クルーサンまたはフローレス・デ・マヨという花祭りが全国的に行われます。これはローマ帝国時代のコンスタンティン大帝の母、セント・ヘレナがエルサレムで、キリストが磔になった十字架(クルス)を見つけたという故事にちなんだお祭りです。村や町では娘たちの美人コンテストが行われ、月末のパレードのセント・エレナ役を選びます。そのエスコート役のイケメン・コンテストも同時進行です。パレードでは、美男美女がフィリピンの正装でおめかしして、花で飾られたアーチを掲げるお供を従えて町の中を歩きます。首都マニラでは一番人気の女優や歌手などがセント・エレナ役とエスコートになるので、例年「今年のセント・エレナは誰になるのかしら・・・」と巷の話題になり、最終日曜日の花で飾られたオープンカーでのパレードでは、その姿を見ようとたいへんな人出になります。

 


わが家のお手伝いさんの一人も、田舎からコンテストに出るように呼ばれた、と言って休暇をとったことがありました。「???」という気がしないでもなかったのですが、ドレスを作ったりする費用をカンパして送り出しました。結果ですか?
本人いわく「準ミスに入った」そうです。影の声「うーーん、美人の基準はいろいろだね・・・」

5月は一年でいちばんお花がきれいで、果物がおいしい季節といわれています。もしフィリピンをお訪ねになる機会がありましたら、ぜひ5月のお祭りも日程に組み入れてお出かけください。

 

 

プロフィール Kyoko Ty :
東京都出身。1974年に渡比、1982年より在比駐在員の夫人たちを中心に活動する「フィリピンに学ぶ会」に参加。会の活動のひとつ「食物サークル」の世話役としてフィリピンでの食生活指南役をつとめる。
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