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2.202016
TOPIC 『民衆』 F・ショニール・ホセ著を読んで フィリピン出張⑤
山本まつよさんはフィリピンの本の翻訳をはじめ、各島の伝統織物やカゴ等の民芸にも大変詳しい方です。彼女がフィリピン文壇を代表する小説家、フランシスコ・ショニール・ホセ F.Sionil Joseさんと長きにわたり親交があると知り、ホセさんの本に興味がわきました。
ショニール・ホセさんは、現在91歳。通称アジアのノーベル賞と言われている、ラモン・マグサイサイ賞文学部部門を受賞し、2001年には勲三等瑞宝章を受章しています。「フィリピンの人間国宝」とも称され、多くの人たちから敬愛されています。日本に毎年来ている親日家ではありますが、第2次大戦中の辛い思いは決して忘れられないとも言っています。
彼の代表作は『ロサレス物語』で、5部からなる大河小説のうち『民衆(上・下)』と『仮面の群れ』が山本さんの翻訳でめこん社から出版されています。
そこで、早速図書館から『民衆』を借りてみました。上・下2冊もあり、出張まであと一週間。はたして読み終えるのか?ちょっと心配でしたが、読み始めてみると、あれよあれよと引き込まれ、あっという間に3日で2冊を読み終えてしまいました。こんなに夢中になって本を読んだのは久しぶりです。
時代は1970年代、マルコス時代に田舎からマニラの大学に進学した主人公が、都会の生活にもまれながら、友情や恋、暴力、そして学生運動などの体験を通して悩み、傷つき成長していく様子が描かれています。若い彼のみずみずしい感性や強いエネルギーが伝わってきますが、ただの青春小説ではなく、政治の腐敗から来る貧富の差、救いようのない貧しさに苦しむ民衆の嘆きや怒りがビシビシと伝わってきます。今私たちが交流しているフィリピンの小規模生産者の人たちの生活と重なり、余計に引き込まれたように思います。
そして、ホセさんの登場人物の心理的描写や生活描写は素晴らしく、まるで今フィリピンにいるような錯覚にさせられます。彼の小説家としての力量と山本さんの翻訳の素晴らしさに感動させられました。
フィリピンに興味のある方には、ぜひ読んでもらいたいと思います。