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フィリピン伝統織物コミュニティを支援 WOVEN.PH (ウーヴンフィリピン)

若き社会起業家たちの挑戦 WOVEN.PH

フィリピンでは、伝統手工芸の衰退に危機感を覚え、その再興と継承に挑戦する若者たちが増えています。

写真は、そんな若き社会起業家のひとり、WOVEN.PH(@woven.ph ) の代表パトリシア(Patricia F. Lim)さん。マリキナ市の事務所を訪問し、インタビューさせていただきました。💞(2023.7.14.訪問)。

韓国のセミナーから昨日戻ってきたばかりというパトリシアさんは、疲れもみせず笑顔で私たちの質問に答えてくださいました。大学で経営学、大学院の社会起業家コースで学び、社会人として広告会社やIT関係の会社で仕事経験を積んだ後、起業したそうです。彼女は起業にあたり、各地の伝統手工芸品製作現場に足を運びリサーチしたといいます。とても研究熱心です。

私たちが持参した、フィリピンですでに失われてしまった「輪結びつなぎ」技法をまとめた英語版本(渡辺敬子著)と、技法を再現した「輪結びブローチ」をお渡しすると、とても喜んでくださいました。布と布をつなぐ伝統のランキット織のテープにも詳しく、数種類の見本を出して 説明してくれました。各地域の伝統織見本帳などを作り、商品化にあたり、研究と吟味を重ねているのがよくわかります。

伝統織物の生地見本帳

 

手仕事に価値を、そしてより強力な伝統手工芸産業の構築を

WOVEN.PH 創始したのは、ジョン(Jhon Francia)さんで、彼も若き社会起業家です。大学の同級生で同志でもあり、妻でもあるパトリシアさんと社会問題に取り組んでいます。

彼は、2013年、スーパー台風で壊滅的な被害を受けたサマール島の手織マットの伝統工芸職人たちの復興支援計画に携わりました。古くは女性たちのよい収入源だった家庭用マット製作でしたが、今や美しいマットの製作に1か月かかっても収入はわずか月に600ペソ(約1500円)。皆子どもたちに仕事を継いでほしくないと考えていました。

彼はフィリピンの美しい伝統手工芸品が消滅しつつある現状に直面し、その原因を研究しました。すぐれた伝統技術があり、多くの人材がいるにもかかわらず、仲買人や企業が買い付け時に価格を最低に買いたたき、一方で高い販売価格をつけ、高利益をあげるという、生産者が不利になるシステムこそが問題だと発見しました。

そこで、ジョンさんはまず、立場の弱い個々の職人たちをあつめて、織物コミュニティ(協働組合)を組織。職人たちがより多くの収入を得られるように、皆で経済の仕組みを学んで直接取引を導入したり、マットのデザインを工夫するなどして、スキルアップを図りました。その結果、手織マット業界の価格引き上げに成功し、生産者の収入を2倍以上にしました。

こうした手仕事に携わる生産者と企業の富の不公平な分配という構造的な問題だけではなく、専門知識や販売ネットワークにアクセスできないなどの全国の職人たちに共通の問題があることを発見しました。彼はこの経験から、各地の織物コミュニティが抱える共通の問題を変革するべく、果敢に挑戦しています。

 

西サマール州の伝統手工芸品のティコグ草のランチョンマット。WOVEN.PHがアドバイスした美しいデザイン。Basey(ベイシー)協同組合より

細やかなデザイン模様は、染色したブリ草を絵を描くように差し入れて作っていきます。同デザインでPCケースも製作。伝統の敷物マットも人気だそうです。

 

 

WOVEN.PHとは

「私たちは伝統織物の職人とともに、現代のライフスタイルに寄り添う伝統文化としての商品をデザインし、提案します」

パトリシアさんは、伝統織物を現代のライフスタイルに合うように商品デザイン&提案していますが、ご苦労も多いようでした。

バッグなど競合商品が多いジャンルだと多くの販売は厳しくなるので、考えぬいて商品企画したのがノートブックPC用のPCケース。若い世代にニーズのある商品です。草素材のモダンなデザインのPCケースは珍しく、人気商品になっているとのことでした。また、若者が手に取りやすい小物類、パスポートケースやバッグタグ、カードホルダー、キーチェーンなどカラフルで魅力的な商品がラインアップされていました。さらにWOVEN.PHは、シンガポールやUSAをはじめとして、世界のマーケットを見据えて、企業や世界のアーティストとのコラボレーションによる新しいデザインの模索や環境負荷に配慮した商品開発に挑戦しているそうです。

サスティナブルなビジネスにするためには、一定したデザインの商品をある程度量産できることも必要です。小物はとくに柄出しが重要で、小さな面積で映えるデザインと色使いを吟味するには大変なことだったと思います。機械織りなら量産可能ですが、手織りの場合、織り手の技術や糸の染色などの一定の品質管理がさぞかしご苦労があるのではと思います。美しい細かなデザインの手織布は熟練技術が必要ですが、小物使いにとても映えて素敵です。

パトリシアさんから学ぶ

私たちもフィリピンの伝統織物を日本に紹介するにあたって、その魅力を日本の現代のライフスタイルにどう提案するか、日本のデザイナーさんと悩む日々ですが、製作には高いハードルがいくつかあります。手織物は織り手によって織の密度など品質が異なってしまうこと。また注文には糸の調達・糸の染色が必要ですが、たとえば赤色でもさまざまなトーンがあり、「サンプルと同じ赤色」と指定しても、再注文すると違う色合いなっていたりします。価格的にも手織布は大変高価なので、商品にたくさんの用尺が使えません。布のデザインによっては、使える布部分が限られてしまったりもします。私たちは現地に頻繁に通うことはできないので、マニラのNGOを通して布の調達をしていますが、色と織の品質維持については苦労しており勉強の連続です。パトリシアさんの選択と企画力、技術指導は考え抜かれていて、なるほどと大変勉強になりました。

 

伝統織物と本革のコンビネーションが美しいパスポートケース。事務所を構えるマリキナ市の地場産業は革製品や靴の生産。すぐれた地元の革職人とコラボして地域活性化にも貢献しています。

伝統織物のカラフルなバッグタグとキーチェーン。縫製もしっかりしています。

 

マリキナ市のオフィスにて。検品や発送、タグ付け等を行っています。

 

多くの支持を得て販路拡大中

WOVEN.PHの商品は、マニラのあちこちのお店で扱われています。ショッピングモールやホテルの中のお店やお土産屋さんなどでも販売しているようです。フィリピンを訪問された際には、ぜひ手にとってみてください。またwebshopでも注文できるようになっています。

自国の伝統手工芸のすばらしさを知り、次世代に継承しようと奮闘しているパトリシアさんご夫妻の姿には、感動させられました。とくに、富の不公平な分配という社会に横たわる構造的的問題にも挑もうとする果敢な勇気には頭が下がります。大学で経営や社会起業を学び、社会経験を十分に積んだうえでのビジネスでの挑戦。きっと彼らは社会を少しずつ変えて行けるだろうと思います。

フィリピンでは大学や大学院に社会起業のコースがあり、学んだ学生たちは一度社会経験を積むことを推奨され、その後、自分なりの社会起業するという形が多いそうです。教育の力は大きいし、なぜフィリピンで多くの若者たちが社会起業家として活躍しているのか、少し理由がわかったような気がしました。

世界を見据える30代から、私たちもたくさんの元気と勇気をいただきました✨✨✨

 

 

 

 

 

 

 

 

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