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伝統織物『ビナクル』の里 6 ピニリ村

伝統織物『ビナクル』の里6  ピニリ村へ PINLI

・フィリピンの人間国宝、マグダレナ・ガマヨさんの工房へ2/29

今回私たちは、幸運にもイロコス・ノルテ州のピニリ村を訪問し、人間国宝のマグダレナ・ガマヨ (Magdalena Gamayo)さんにお会いすることができました。彼女は95歳の現役の職人で、2012年にフィリピンの国家文化芸術院(NCAA)よりGAMABAを受賞し、人間国宝(Living National Treasure)として認定された方です。

*GAMABAは1992年以来、フィリピン国家文化芸術院より優れた功績のある人物に贈られる賞で、ユネスコ人間国宝の基準に即した豊富な知識や技術を身につけた職人や民芸家に与えられる栄誉な賞です。

ピニリ村で私たちの訪問を受け入れてくださったのは、フィリピン国家文化芸術院会員のエドウィン・アントニオ博士 (Edwin V. Antonio,PhD)。彼はNGO「Katutubo Exchange : KXPH」を主宰し、先住民族の子どもたちへの健康支援や伝統文化継承プログラムを実施しています。

●山深き里ピニリ村

私たちは南イロコスのビガンから北イロコスへと車で北上し、ピニリ村をめざしました。幹線道路からピニリ村へのゲートをくぐり、マグダレナさんの工房を目指します。ピニリ村は高品質のニンニク(ホワイトゴールド)で有名な農村で、収穫したニンニクを牛車に積んで運ぶ農夫婦の見事な銅像モニュメントがありました。

まっすぐな田舎道をひたすら車を走らせますが、標識もなく、集落もまばらです。緑深い山道をどんどん進むと、道の分岐点にフィリピン軍のキャンプ施設が。草深い何もないところと思いきや、各地域につながっている北イロコス地域の要衝。太平洋戦争時には、日本軍がこのあたりから、より奥の山岳地帯へ敗走したといいます。
何度も道を尋ねながら車を走らせて、農道に入り、小さな集落を見つけましたが、ピニリ村はさらに奥まった土地にありました。

マグダレナさんの織物工房

・マグダレナさんは95歳のアーティスト

マグダレナさんは、人間国宝受賞を機に、政府から伝統織物継承のための支援を受けられるようになり、自分の工房を広げ、若者たちのトレーニングのための織機を十数台設置しています。

 

今でも毎朝4時に起き、5時ころから夕方まで幾度か休憩しながら織るのが日課となっているそうです。

 

マグダレナさんが織を始めたのは、第二次大戦前の15歳のときで、80年ほど織の仕事を続けています。当初は父親の手製の織機で叔母から織り方を習いましたが、戦後は新しい織機で。
いくつもの基本の織り方をマスターした後は、独自のパターンを考案し、さらに高度な織の技術を習得していきました、ビナクル織の複雑なデザインやピニリアンという小花模様を浮きたたせる伝統的な難しい技を再生したことが評価され、受賞につながりました。

 

自分で織りあげた水色の地に白い格子線と赤い玉が織り込まれているドレス。ピンク色の切り替えがとてもおしゃれ。

マグダレナさんのコーディネーターを務めているエドウィン博士。彼女の体調に配慮しながらスケジュール調整や伝統織物の後継者育成プロジェクトを実施しています。Tシャツには、主宰するNGO名をビナクル織の端切れでパッチワーク。

 

最近織り上げたというダイナミックで斬新なデザインのビナクル。つねに新しいデザインに挑戦しているという現役のアーティストです。

カラフルなイナベルも人気。刺繍のようにみえる細かな模様は、織のテクニック。

●若者を育てる工房

後継者育成のプロジェクトは、『伝統織物コース』の10回連続セミナー。イナベルの歴史や織の基本を学びながら、各自が卒業式に身に着けるショールを織り上げます。希望した近隣のシニアハイスクールの生徒が集まりますが、近隣といってもいくつもの山を越えてやってきます。
訪問当日は、ちょうどセミナーの初日でとても賑やかでした。私たちのインタビューを生徒たちも見学。

ここではマグダレナさんの織の技術を直接学ぶことができます。生徒たちは、手足の複雑な動きとタイミングなどを真剣な表情で見つめていました。
地方都市の若者の多くは、町の便利な生活にあこがれ、ITの仕事への関心が高く、伝統織物の後継者不足が心配されているそうです。セミナー体験者から一人でも後継者が育ちますように。

 

これは綿花の苗。伝統織物の再興のためには、かつてのように良質な綿花を地元で育てて糸作りをすることが大切とエドウィン博士は考え、農家には綿花栽培をすすめています。識者や富裕階層を巻き込んで、資金を集めのためのファッションショーやイベントを企画しているそうです。
マグダレナさんの受賞で注目を集め、スタートしたこの復興プロジェクトが、これからも続いていきますように。

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マグダレナさんに初めて会いすることができ、ご高齢であり、想像以上に小柄でか弱いおばあちゃま、という印象でしたが、織機に向かうと、何本ものペダルを駆使して力強く踏み込み、糸を素早く操る手の動きはみごとでした。それでも、最近は骨が痛んだり、視力が弱ってきたとおっしゃっていました。
翌週には、首都マニラで開催された国際会議「NEGOSOYO WOMEN2020」にアジアを代表する5人の伝統織物の女性織り手に選出され、フィリピン代表としてパネリストとして参加。遠路長旅もこなすミラクルな体力をおもちの方でした。マグダレナさんの健康を心よりお祈りしたいと思います。

想像以上に山奥に位置していたピニリ村。実は、下調べのときに、太平洋戦争中、日本兵がこのあたりを敗走するときに、村々の家を破壊し、略奪し、女性たちの織機も壊したという記述を見つけました。訪問してみて、こんなルソン島北部の山奥まで日本兵は進み、敗走したのかとあらためて衝撃を受けました。

マグダレナさんも、あるインタビューで、戦時中に大切な織機を失ったと語っていました。彼女にとって私たちは、なんと「戦後初めて会った日本人」だったそうです。私たちには何もおっしゃらなかったけれど、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

戦後75年の時が流れていますが、戦争で何が引き起こされたのか、歴史をしっかりと学び直さないといけません。とくご縁のあるフィリピンと日本の歴史を次の世代にも伝えなくては!
今、世界中がCovid-19と戦っていますが、いわゆる「戦争」の構造的な問題や政府のあり方、世界の協調など、形は変えても共通項はたくさんあります。歴史から多くを学ばなくてはと思います。

伝統織物『ビナクル』の里 7  ナグバカラン村  へ続く・・・・・

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