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4.212020
伝統織物「ビナクル」の里 5 ビガンⅡ
●ベテラン職人のカタリナさんの織物工房へ
市内から少し離れた南シナ海を望むミンドロ地区。ビナクル織を得意とするベテラン女性職人さんがいるとの情報をいただき、ぜひお会いしたいと思い向かいましたが、住所はわかりません。幸い、トライシクルの運転手さんがこの地区出身ということで、何人かに道を尋ね、尋ね、たどりついたのが、青く輝く東シナ海でした。
この海岸からほど近い、潮騒が聞こえるコンクリート造りの小さな家に、カタリナ・アブログ Catarina Ablog さんの工房はありました。カタリナさんは、現在86歳の現役職人でビナクル織のエキスパート。17歳から織を始めたという約70年のベテランです。織は母親から習ったそうです。ミンドロ地区には3人のイナベル織職人がいるそうですが、専業はカタリナさんだけとのこと。カタリナさんの作品はビガン旧市街のお店(土産店)等が定期的に買付に来てくれるそうです。
工房にはペダル式の織機が2台設置されていました。現在、20歳の孫娘が織りを始め、州政府から織機を寄付してもらえたので、一緒に織っているとうれしそうに語ってくれました。
毎朝、5時から織機に向かい、難しいビナクルデザインでも、14-15ヤードなら、だいたい2週間くらいで織りあげるとのことでした。とてもパワフルです!
このカタリナさんの織りかけの作品は、薄手のビナクル織。繊細な模様が特徴で上品なオレンジ色がとても魅力的。彼女の作品は芸術性も高く評価されています。フィリピン国立博物館(イロコス)の国際女性デー2020を祝う催しでは、各分野で輝く女性の代表8人に選ばれ、伝統織物の講座とデモンストレーションを行いました。
織った作品を見せていただきたい!とお願いすると、奥の部屋から赤色のビナクル織を出してきて、見せてくれました。布一面にワールプール(渦巻き)という細かな曲線が広がるデザインで、浮かびあがる小宇宙に引きずり込まれるようでした。高度な技術を駆使した丹精こめた作品に、一同感動しました。
カタリナさんは、きゃしゃで小柄ですが、背筋も腰もピンとのびたミラクルな美しさの86歳。両手と両足ペダルを駆使する複雑な動きの作業で、頭脳もクリア!労働量もかなりなものと想像できます。日々の精進が、キリリとした表情や動作にもうかがえます。
イロコス地方のイナベルのなかでも、ビナクル織は複雑なため、織れる人が限られますが、イロコス・スル(南部)のビガン近郊の織工房でも、わずかながら技術が継承されていることがわかりました。南部では、細い糸を使用した薄手のビナクル織物が特色のように思われました。
歴史都市ビガンは多くの観光客が訪れるため、手織りのイナベルはお土産にもなる生活実用品として多く織られていました。シンプルなストライプデザインなどのカラフルなテーブルクロスやマット、タオル、毛布など。あるていど量産できるので、海外のマーケットも輸出可能です。
織るのが難しく手間のかかるビナクル織の継承、生き残りには、そのすばらしい価値、魅力を伝える商品開発と手織りを評価してくれる顧客開拓が今後一層必要になると感じました。
・伝統織物『ビナクル』の里 6 ピニリ村 Pinili へ続く・・・
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