7月29日・7月30日の2日間、武蔵野国際交流協会で、教員を対象にした夏期集中講座が開かれました。今年のテーマは「学校と地域でつくる国際理解教育」。
1日目は国際理解教育の基本的な考え方を確認し、2日目は4つの分科会に分かれ、地域に暮らす外国人や外国人を支援するNGO・NPO団体と交流。日本に暮らす外国人が日本で生活を始めて驚いたことや現在抱えている問題を聞き、解決に向けてともに考えます。
私はNGO「ピナット」の会員として「フィリピン人ママと日本の学校」という分科会に参加し、フィリピンの少数民族・カリンガの竹楽器「トンガトン」のWSを行い、お昼はみんなでおいしいフィリピン料理を食べながら、フィリピンの生活や文化について紹介しました。
*「ピナット」三鷹市・武蔵野市を中心に国籍や民族を超えて、みんなが生きやすい地域づくりをめざしているNGOです。
フィリピン・カリンガ族の竹楽器トンガトンを演奏。
竹筒を地面に軽く打ち続けるだけの簡単な奏法なので、子供から大人まで、初めての人も参加できる楽器です。竹の太さや長さの違いによって異なる音や互いに異なったリズムを組み合わせながら、ハーモニーを作り上げていきます。
分科会の第2部:「フィリピン人ママに聞いてみよう!」
日本で子育て中のフィリピン人ママが、日本の生活で戸惑ったことや「学校」にお願いしたいことなどを率直に話してもらいました。さらに、クラスにフィリピン人ママがいたことのある教員、または現在クラスにいて文化や生活の違いで戸惑っている教員に話してもらい、共に理解するためにはどうしたらよいか?みんなでざっくばらんに話し合いました。話し合う中でとても興味深く、「なるほど!」と感じたことがいくつかあったので紹介します。
Q1:日本の生活で驚いたことって何?日本人の教員からの質問(J教員)
Fママ:日本人は親と子供が一緒にお風呂に入ると聞いて驚いた。フィリピンはシャワーだけ。小さな子だけは親が洗ってあげるけれど、親は裸にならない。それ以上の年齢の子は、ひとりでシャワーを浴びる。8歳の娘に「ママも一緒にお風呂に入ろうよ!」と言われて、びっくり。日本人の家族は親子で一緒にお風呂に入ると聞いて、とてもびっくりした。小学生になっても一緒に入るなんて!とても恥ずかしいと語っていた。
これは意外!フィリピンに5年暮らし、15年もフィリピンを訪問している私としては、フィリピンの文化やフィリピン人の生活についてよく知っているつもりでいました。家族の絆がとても強いフィリピン人が、親子でシャワーを浴びないと知り、ただただビックリ。
Q2:学校行事に参加しますか?フィリピンと違うと思うことはありますか?(J教員)
Fママ;なんといっても運動会!小学校も中学校もなんで1日のためにあんなに毎日練習するの?ものすごい時間やエネルギーを注ぐのが不思議。これは欧米の保護者も同じことを言っていたらしい。 教員一同苦笑い。
Q3:日本の学校(義務教育)に落第はなぜないの?(フィリピン人ママからの質問)
フィリピンの教育では、小学校(6年)もハイスクール(以前は4年だったが、今は6年になった)も落第がある。
年に4回テストがあり、そのテストの結果が悪い場合は落第させられる。しかし、先生にとっても自分のクラスから落第生が出るのは自分の教育方法に問題があるとみなされるため、落第させないように、試験前は補習などして懸命にフォローする。
Fママ:日本の小中学校では勉強ができない子がいても落第させないなんておかしい。そのまま、進学したら益々勉強が分からなくなる。先生は変だと思わないの?ちょっと無責任に感じる。
例えば、3年生で日本に来て日本語が分からないので、勉強もよくわからない。もう一度、3年生をやり直したいのにできないないなんて、これはとても問題だと思う。
J教員:フィリピンでは、小学生で落第したら恥ずかしくて学校に行きたがらなくならないの?
Fママ:最初はちょっと恥ずかしいけれど、フィリピンでは落第する人がたくさんいるから大丈夫!(笑)
J教員:日本でもわからないままで放っておかない。なるべくわかるように説明するし、親に連絡してフォローしている。しかし、放課後に居残りさせるほどの時間がないのが現状。
Q4:学校のことで困っていることは何ですか?(J教員)
Fママ:少し日本語で会話ができるようになったけれど、学校からのプリントが多すぎる。読めないし、書けないのですごく困る。子供が3人いたら、プリントだらけですごいストレスになる。
J教員:ご主人やお友達に読んでもらえば?
Fママ:もちろんお願いしているけれど、毎日、毎日頼めない。主人も疲れていて難しい。本当に大事なプリント、提出しなければならないものは、プリントに赤丸とか目立つようにマークを付けてほしい。(なるほどね~教員納得!)
Q5: 今、子供の教育のことで一番心配していることは何ですか?(J教員)
Fママ:中学生がいるので「受験」が心配。どんな高校があるのか?どこを受ければ良いのか?心配。
*これは日本のママたちも同じですが、言葉のハンディがあればなおさらのこと。
また、中3の受験前は重要なプリントが多くなるし、提出すべきものも増えるので、担任は外国人ママたちへ十分な配慮が必要!と中学校で日本語支援をしている教員からのアドバイス。
今回のこの話し合いに参加して思ったことは、やはり先ずは相手のことを知り、理解しようと努力することが大事。日本にいるのだから、日本のやり方でやらなれば!と考え方ややり方を押しけても、理解しないままでは納得できないままでストレスになるばかり。近所にも外国人が増えつつある、日本に来たばかりで困っているようであれば、務めて声をかけたり、相談にのってあげるよう、少しばかり「おせっかい」をして、異文化交流もしてみようと思いました。