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12.162024
バナナとアバカ(マニラ麻)からアートなインテリア製品 “TADECO Home” (ミンダナオ島 ダバオ市)
LIKHANG HABI MARKET FARE 2024 レポート
和紙のような美しいバナナの紙 “TADECO Home”
書道を習っているために紙にとても興味があり、和紙のような手すきの紙を見つけました。”TADACO Home”のブースで紹介されていました。
ウェブサイトによると、”TADECO Home”は、バナナ輸出業者”TADECO”のコミュニティ開発プログラムからスタートした会社だそうです。バナナ農園(プランテーション)で収穫したバナナの副産物から、手作りの紙やその他の装飾品なども製造しています。すべて天然素材を使用しています。ノート、メモ、コースター等バナナ繊維の紙はかなりしっかりしており、まだ字を書くには使ってないのですが、硬さがあるので何かを作る時に役に立ちそうです。現地価格は日本の和紙の半額ぐらいです。
購入したバナナペーパーには金色で伝統のティナラク織のデザイン模様が描かれていました。
ミンダナオの先住民族ティボリの伝統織物ティナラクの継承を支援
TADECO Home は、先住民族ティボリの職工の収入向上プログラムとして、アバカ繊維や伝統のティナラク織を使って現代的なインテリア製品も製作しています。国内外での販売をめざしているのことです。
ミンダナオ島は「マニラ麻」として知られる「アバカ」の産地です。TADECOのバナナ農園(プランテーション)は、アバカ栽培からスタートしました。アバカは強靭で耐湿性もある優れた特性から、船のロープに使われるなど、化学繊維が出現する前までは、世界に輸出される重要な作物となり、大規模なアバカ農園が経営されていました。戦前はアバカ農園の労働者として日本人も多く雇われていたほどです。戦後アバカの世界需要は急速に減り、アメリカ資本が入り多くは巨大なバナナ農園に姿を変えました。しかし、現在でもアバカはフィリピンを代表する優れた天然繊維として世界へ輸出されています。
アバカ繊維は古くは先住民族ティボリが布地の原料として用い、伝統的な草木染の染織による「ティナラク織」は何世紀にも渡り世代を超えて受け継がれてきました。デザイン模様は神のお告げによって夢に出てくるともいわれています。フィリピンを代表する美しい伝統織物のひとつです。
ミンダナオ島の森の恵みで暮らしてきた先住民族ティボリは、土地所有の概念をもたないため、移住してきたフィリピン人に次々と森を奪われて僻地に追いやられて生計手段を失い貧困に陥っているという歴史があります。彼らの貴重な伝統文化を守りながらの仕事づくりと生活向上の手助けをすることは、森林伐採を続けている大資本や外国資本の会社の責務と思われます。
色や柄が華やかなモダンなティナラク織。アバカは照明器具などにも利用されています。
伝統の草木染は落ち着いた色合いですが、販売されていた写真のティナラク織は華やかな色彩とデザインで、一部は化学染料によるものと思われます。化学染料は発色もよく、安くて手軽なので量産に向いています。現代的な生活に合わせやすいテーブルクロスやランチョンマットなどには魅力的かもしれません。伝統のティナラク織が、少し形を変えて現代生活になじみ、多くの人の手に入り、気軽に使える商品になることは伝統の継承の一つの形でしょう。
一方で、今回のイベント主催者HABI Councilは、織物の分野でも環境負荷の低い「伝統の草木染の継承と復活を」と呼びかけていました。フィリピンはオーガニック大国を目指しているといわれますが、まだ多くの島々に草木染の伝統が息づくフィリピン。国やNGOの手厚い支援のもとにその先人の知恵を継承していってほしいです。
失われ行く伝統織物の継承はどの国でも問題になっていると思いますが、時間をかけて培われてきた文化は未来を築くためにも必要です。伝統文化を守る制度や取り組みは官民で必要だと痛感しました。