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5.102013
アメリカのフェアトレード 東海岸ボストンBoston編
空飛ぶ赤ずきん@USA レポート 東海岸 Boston ボストン編 2013 年 5 月 遠藤康子
欧米で盛んといわれるフェアトレード。世界でフェアトレード(以下 FT と略)を行う主要な輸入団体の販売売上データ(2006)をみると、アメリカの 2 つの組織がベストテンに入っている。第6位が Equal Exchange18.8%、第8位が Ten Thousand Villages18.7%。アメリカではどのように市民に FT が浸透しているのだろうか。東海岸の Boston で、2 つの社会企業の店舗を訪ねてみた。
Ten Thousand Villages テン・サウザンド・ビレッジ @Boston
www.tenthousandvillages.com
世界最大の FT 団体のひとつで世界 FT 機関(WFTO)の創立メンバー。1946 年にプエルトリコから刺繍製品を輸入して教会などで販売したのが「フェアトレード」の始まりといわれている。現在 37 か国 130 の生産者グループと連携している。全米とカナダで 390 以上の小売店販売ネットワークをもつ。Downtown 店の商品は、アクセサリー、インテリアなどの日用品、楽器、食品などバラエティーに富んでいる。生産者は中南米のグループが多いと感じたが、年報資料(2012)を確認すると、東南アジアが 62%(南 44%,東 18%)、ラテンアメリカ 17%、アフリカ 10%とのことだった。売り上げは前年度比 11%と増加している。
アシスタントストアマネージャーのウェンディ—さんに生産者について質問すると、いろいろ説明してくれたが、私はアメリカ英語がよく聞き取れない。すると彼女は「待っていてね!」とパソコンに向かい、手早く商品のデータをプリントアウトして渡してくれた。商品の写真入りでサイズや材質、チャームポイント、生産者のプロフィール、会社がいつから取引を始めたかなどの詳細がよくわかる。店舗スタッフの情報の共有だけではなく、顧客サービスにも生かせるよい仕組みだと思った。
Ten Thousand Villages は巨大な社会企業、アメリカらしくビジネスネットワークで成長を続けている。しかし、ウェブリストにある店舗は、訪ねてみると東海岸 Portland ではすでに撤退していたし、Boston 近郊の Providece でも閉店していた。小売業界の生き残り競争の激しさもうかがえた。東海岸の Portland で”Evergreen Fair Trade”ショップを開店したジェフさんは、商品の仕入れはほぼ 100%が Ten Thousand Villages からと話していた。安心して楽に仕入れられるそうだ。ジェフさんのような提携店舗も多いらしい。希望者には開店マニュアルや成功ノウハウの指導も積極的に行っていて、経営経験のない人でも一歩を踏み出しやすい。
日本のFT ショップは個人店が大半なので、経営ノウハウ指南や情報交換ができる支援組織があればどんなにいいだろうと感じた。いくつかの都市でショッピングモールを歩いてみたが、おもちゃなどは中国製の大量生産の商品ばかりだった。そんななかで、Ten Thousand Villages のぬくもりあるハンドメイド商品は、歓迎されている。あるお客さんは、ギフトは必ずここで選んでいると話していた。FT の手工芸品販売は全米の Ten Thousand Villages が力強く支えているといっても過言ではないのではないか。
赤ずきんちゃんの変身ぶりにはびっくり!おばあちゃんの顔がお気に入りとのこと!
Boston/Downtown 店ケンブリッジにも店舗がある。どの支店で使えるギフトカードもある
ゆったりしたフロアに色別に商品がディスプレイされて選びやすい
バングラディシュのノクシカタ刺繍も人気商品
Equal Exchange Equal Exchange イコール・エクスチェンジ @Boston
コーヒー、紅茶、砂糖、チョコレートなど食品を扱うフェアトレード会社。食品生協のマネージャーとして知り合った 3 人によって世界の生産農家とのよりよい関係への変革をめざして 1986 年に設立された。発展途上国の生産者(生協)と取引を行っている。主力商品のコーヒーやカカオ、バナナ、砂糖、バニラなどは中南米の生産者が多い。アメリカの消費者はオーガニック志向が強いので、質が高く、小さな生産農家を応援できるフェアトレード商品は支持され売上を伸ばしている。
Causway の Equal Exchange 直営カフェ。2009 年に Boston の Green Business Award を受賞している。
リサイクル分別を徹底している。
商品は赤いロゴがトレードマーク。原料は Transfer USA の認証を受けているが、商品には FTラベルではなく、Equal Exchange の赤いロゴが付けられ、目印になっている。
フ ェ ア ト レ ー ド タ ウ ン ・Boston
Boston はアメリカでもっとも古い歴史をもつ土地で人口約 60 万人。2010 年 8 月、アメリカで 20番目のフェアトレードタウンに認定された。大都市ではサンフランシスコに次いで 2 番目だという。どんな人々の努力で認証にこぎつけ た の だ ろ う か 。 Fair TradeBoston Coalition(フェアトレードボストン連合)は、企業・学生団体、NGO、教会、自治体、地域社会リーダーのネットワーク。キャンペーンをけん引したのは企業の力(Ben&Jerry’s,Equal Fxchange,Ten Thousand Village,AfricanCraftstand,Flatblack Coffee)が大きいようだ。とくにアイスクリームの Ben & Jerry’s さんたちが強いリーダーとしてさまざまな立場の人たちを束ねた。FT 商品の取扱店を増やし、企業間の連携も深め、自治体や市民団体と交渉し、マスメディアにもアピール。イベントやキャンペーンには企画力と資金力も必要だ。キャンペーンが参加企業の売り上げと信用に結びつけば理想的ともいえる。
フェアトレードタウンの認証を得ることは、自治体のフェアトレード宣言であり、手作りの地域活動なのだ。Boston では、フェアトレード音楽祭が毎年 5 月に開かれており、盛況だという。地域のさまざまな人びとの結びつきで、より楽しく、効果的なイベントも行えるというわけだ。
アメリカ各地でフェアトレードタウン活動を推進するために、キャンペーンサイトが 2013年にたちあがった(http://fairtradecampagnes.org)。キャンペーンのやり方やチームの作り方、コミュニティや自治体との連携など、ケーススタディつきで紹介されている。興味をもった人が近辺の活動にすぐ参加できる仕組みも作られている。「一人で始めるな、仲間を作れ、過去の成功例をシェアして成功を勝ち取ろう!」という充実した力強いサイトだ。アメリカでは、フェアトレードは社会変革のためのキャンペーン活動になっている。
Boston 近郊 Providence ↑Small Point Café は、すべて Equal Exchange の商品。駅構内のカフェも同様。
Ben&Jerry’s アイスクリームショップ
中学の同級生だった Ben と Jerry は1978 年に手作りアイスクリームの店をバーモント州に開店。以来世界 27 か国にまで店舗を広げている。彼らは CSR 活動(社会貢献)に熱心で、フェアトレード認証の原材料を使用(カカオ、バニラ、コーヒー、バナナ、砂糖)。牛乳とクリームについても、遺伝子組み換えをしない牛、成長ホルモンを使わないというポリシーで、認定フェアトレード原料に移行中。
アメリカでは、昨年訪問したフランスとは違って、フェアトレードラベルが市民生活に浸透しているというわけではない。フェアトレード商品は、質の高いオーガニックの延長として認知されているようだった。世界第 6 位の FT 売上を誇る EqualExchange 社のマーケットは巨大だ。生活に根ざした地道な生協活動の底力を感じた。
Transfer USA のFTの認証の材料は、企業の CSR 推進によって採用され、市民の手元に商品として届けられている。Ben &Jerry’s の安全でおいしいアイスクリームを食べられる子どもたちは幸せだ。また、FT のコーヒー豆は、スターバックスでは一部のコーヒーに、ダンキンドーナツではエスプレッソとラテに使われている。市民のキャンペーンの後押しで、ビジネスとフェアトレードはいっそう強固に結びついていくことだろう。
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フェアトレードタウンの認証条件は 5 つ
・議会によるフェアトレードの決議 ・フェアトレード販売店の数(人口による) ・地域の職場(企業・役所など)での使用実績 ・メディアの報道やキャンペーン実施 ・フェアトレード推進委員会の設置
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スーパーマーケット Shaw’s のコーヒー売り場
ずらりと並んだ豆(写真上)の奥の棚が Equal Exchange のコーナー。16 種類もの FT のコーヒー豆が販売されていた。さすがコーヒー大国だ。
コーヒー豆を詰める袋にも生産者のアピールがぎっしりと印刷されている。“Whole Foods Market”でも FT 商品は手に入る。